概要
国際文書館評議会(ICA。国際公文書館会議とも訳されます)の記述専門家グループ EGAD が策定した、 アーカイブズ記述の新しい国際標準 Records in Contexts(RiC)の日本語テキストです。 RiC は、従来の ISAD(G)・ISAAR(CPF)・ISDF・ISDIAH の4標準を統合して置き換えるもので、 概念モデル RiC-CM と、それを OWL で形式化したオントロジー RiC-O からなります。
本書は RiC-FAD 1.0・RiC-CM 1.0・RiC-O 1.1・RiC-AG 0.1 の一次資料(本文、OWL ソース、公式ドキュメント、公式クロスウォーク、サンプルデータ)に基づいて執筆しました。 ISAD(G) の多段階記述から RiC の多次元記述への移行の意味、実体・属性・関係の読み方、 RDF・Turtle・OWL・記述論理・SPARQL の入門、推論の具体例、EAD からの変換とマッピングの手順、 和暦や異体字を含む日本語データの扱い、必要となる技術素養までを一冊で扱います。 アーカイブズ学の初学者、目録実務の担当者、デジタルアーカイブや Linked Open Data の 構築に関わる方を想定しています。
構成
- 第1章 RiCとは何か --- 標準の全体像と一次資料
- 第2章 ISAD(G)の世界からRiCへ(参照と識別子の経緯、XML の文法、正規化、隣接標準)
- 第3章 RiC がもたらした変化(自由度とトレードオフ、出所と伝来)
- 第4章 RiC-CMを読む --- 実体・属性・関係(ER 図の読み方、関係のダイアグラム)
- 第5章 RiC-O --- RDF/OWL入門、記述論理、直列化形式
- 第6章 推論 --- 具体的な6つの場面と処理系の中身
- 第7章 実践の手順 --- 変換工程、通し例、日本語データ、保存期間と廃棄、道具箱
- 第8章 どこまで技術を学ぶ必要があるか
- 付録 実体一覧・全42属性と全85関係の原文対照表・関係の13の型・用語集・索引(各章末に確認問題)
サンプルデータ
本書に出てくる作例を、そのまま実行できるファイルにして配布しています (ric-introduction-ja-examples.zip、約240KB)。 Turtle のデータ4本、本書に出てくる SPARQL 14件、SHACL のシェイプと検査対象データ、 および全体を検査するスクリプトが入っています。データはすべて架空です。
推論と検査に使う RiC-O 1.1 の RDF と CSV 一覧も同梱してあるので、展開すればそれだけで
動きます。pip install rdflib pyshacl owlrl のあと python3 check.py
を実行すると、Turtle の構文、語彙名の実在、定義域と値域、問い合わせの返す件数、
SHACL の報告内容が一度に検査されます。同梱の README.md に
Apache Jena Fuseki と GraphDB での動かし方も書いてあります。
本書と同じ CC BY 4.0 なので、授業や研修に自由に使えます。
改訂履歴
- 第1.4版(2026年8月9日)・139ページ
- 記録管理の工程(保存期間の設定、評価選別、保存期間が満了したときの措置)を扱う節を 第7章に新設し、公文書管理法に当てはめた。日本の共有基盤(ジャパンサーチ、国立公文書館 デジタルアーカイブ)との関係を追加。属性一覧の付録、属性の作例、SHACL の実例を加え、 まえがきに役割別の読み進め方を置いた。 本書の作例をそのまま実行できるサンプルデータを新たに配布する。
- 第1.3版(2026年8月1日)・120ページ
- 第4章に実体間の関係を示すダイアグラムと、関係の13の型の一覧を追加。 付録に RiC-CM の全85関係の原文対照表を新設。 第5章の記述論理の節に述語論理の入門を追加。 前提となる技術(ER 図、XML、正規化)の解説を補強。 用語解説と索引を拡充し、訳語と文体を整理した。
- 第1.2版(2026年7月21日)・105ページ
- 初期の公開版。
ライセンスと引用
本書はクリエイティブ・コモンズ表示 4.0 国際ライセンス (CC BY 4.0)で提供します。 出典を表示すれば、複製・再配布・改変・翻訳・授業や出版での利用を自由に行えます。 一次資料である ICA EGAD の RiC 各文書も同じ CC BY 4.0 で公開されています。
久保山哲二『Records in Contexts 入門 --- アーカイブズ記述の新しい国際標準を理解する』 第1.4.6版、2026年、CC BY 4.0。